特に個人の塗装業者の方に多いようですが、お客様から住まいの建坪を聞きそれを基準に見積をしているところがあるようです。
以前住宅塗装工事をさせていただいたお客様から、ある業者の見積書を見せていただいたことがあるのですが、その見積書には
とだけ書かれているのを見て驚いたことがあります。
同じ建坪であっても建物の形状や窓やドアなど塗装を行わない部分がどれだけあるかなどによって塗装の面積に大きな差が発生します。当然見積もりをする側は形状や塗装しない部位によって面積が違ってくることは理解していますので、多くの利益がでる方を基準に計算しているのでしょう。結果的にお客様は本来必要でない金額まで払っていることかもしれないのです。
ちなみに当社では建坪計算や一式(あれこれ含めて1軒まるごと塗装してという意味)いくらです、という見積りはいたしておりません。お客様の住まいを担当者が実測し、必要な面積だけを割り出したうえで本当に必要な金額だけをお知らせしていますのでご安心ください。
建坪計算の落とし穴の例
A邸とB邸の建坪(建築面積)は同じ18坪。しかし形状が違うためA邸の外周は32.4ⅿ、B邸の外周は36ⅿと異なります。(B邸の方が3.6ⅿ長い)
仮に外壁の高さを平屋建てと考え、4ⅿとした場合、B邸の方が3.6ⅿ×4ⅿ=14.4㎡も多くなってしまいます。もしA邸のような形状のお住まいだとすれば、建坪見積りの場合14.4㎡分の仮設足場費用や高圧洗浄費用、塗装費用を余分に支払っていることもあり得るというお話です。
塗装工事における保証は、『誰が保証するのか?』という観点から3つのパターンに分けられます。
基本的に塗料メーカーは保証を嫌がります。なぜならば塗料メーカーにあがってくるクレームと呼ばれるもののほとんど、割合にすれば9割以上が施工側に起因するものだと知っているからです。そのため塗料メーカーは基本的にどのような状態で施工しているのかが確認できな状態では保証しません。塗料メーカーが保証するのは、あくまで出荷した塗料に対しての場合がほとんどです。
もし広告や契約書保証書に「塗料メーカー保証」と書いてあるときは何に対する保証なのかをしっかり確認してください。
保険法人日本住宅保証検査機構(通称JIO/ジオ)という国土交通省指定の公的な瑕疵(かし)保険があります。保証内容は社会通念上必要とされる機能を満たさないことに関して1年間保証するというものです。しかし保証内容で想定している塗装工事の瑕疵(業者の過失によるもの)は『著しい白化、白亜化ハガレまたは亀裂が生じたもの』に限定されています。塗膜の性能や効能など(例:防カビ塗料なのに早期にカビが発生したとか、防汚塗料を塗ったのに汚れたといったもの)は対象外となっています。
「著しい」というような曖昧な表現では、実際トラブルになった時どこまでが保証の範囲内か水掛け論になる可能性が高く、そのため現実的には住宅塗装分野においてはお客様にとってまだまだメリットの薄い制度であると思います。
JIOホームページ
施工業者が独自に保証内容や保証期間を定め保証するものです。このケースが一番多く、最も実効性の高い保証であると思います。しかし業者によって内容や保証期間も様々で、塗料や塗装の専門知識と保証に耐えうるだけの会社規模が無ければお客様にとって有効な保証とならないのが現状です。
しっかりと施工業者に何に対してまたどういった状態になった時にどれだけの期間保証してもらえるのか、保証期間と保証内容を確認しておくことが重要です。
以前、他の業者で施工した際の保証書を見せていただいたことがありました。そこには「永久保証」という文字が書かれてあり、詳しく保証書を読んでみると塗膜が少しでも残っていれば保証対象外という内容でした。これは極端な例だと思いますが、安易に保証期間だけを見て内容を確認しないため後々トラブルになるケースは珍しい話ではありませんのでご注意ください。
最近は減ってきたようですが、住宅塗装広告の謳い文句で、「塗料メーカーと自社が共同開発した高品質の塗料を使いませんか」というものがあります。
はっきり言ってこの類の話はほとんどがウソです。本当は塗料メーカーが開発した、もしくは元々ある一般的に販売されている塗料を大量(数百缶単位)に購入する代わりに、リフォーム業者オリジナルの容器に詰めて出荷し、共同開発として使わせてくれというものです。容器のデザインは共同で作ったということだったり、こういう塗料を作ってほしいと要望を出せば品質を保てる範囲であれば対応してくれる塗料メーカーもありますので広告表示の過信には注意してください。
材料(仕入れ)を一度に大量発注すれば価格が下がるという話は、いろんな場面でよく聞く話です。しかし住宅塗装の場合はちょっと違うので注意が必要です。
外壁塗装の場合には、下塗り塗料と上塗り塗料の2種類の材料を使用するのが一般的です。
上塗塗料についてはウレタン塗料やシリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料など種類も豊富なうえに、お客様ごとに「色」も全く違います。そのため全てのお客様ごとに調色して塗料を作るのが、外壁塗装の業界では常識です。したがって上塗り塗料の大量発注は絶対にできないということになります。
では下塗り塗料に関してはどうでしょうか。下塗り塗料はシーラーと呼ばれるプライマーか凹凸模様を作り出したり、素材の補強を行うための下地調整材というものに大別されます。下塗り塗料についてはある程度種類も限られるため、在庫し使用していくことは可能です。しかし下塗り塗料の使用缶数は面積によっても違いますが5~10缶程度。
例えば大量発注によって値段が1缶当たり500円~1000円値下げできたとしても工事金額にどれ程反映できるでしょうか。
つまりこれは安価に見せかける広告のテクニックで、もし営業マンから「当社は材料の大量発注によって価格が安いですよ」というセールストークを耳にしたら、調色するのに大量発注?下塗り塗料って何缶位使うの?といった質問をされてみるといいかもしれません。
最近よく聞く見積り比較サイトとはどういったものか説明します。 例えば住宅塗装を考えている方が塗装業者から見積りをとったとします。しかし見積書をもらったものの果たしてその内容や金額が適正なものかわからないといった場合に、インターネット上に存在する見積り比較サイトに見積書をメールで送り他社と比較してもらうというものです。そして比較サイト運営会社が後日『あなたがお住まいの地域でもっと価格の安い業者さんがいますよ』と言って連絡をくれたり、比較サイトによっては別業者を紹介してくれたりするサービスです。
そこで是非知っておいていただきたいのが比較サイト運営会社はほとんどの場合、塗装や塗料の専門家ではなく、あくまでも工事業者を紹介する窓口であるということです。詳しく説明すると各比較サイトには運営母体となる会社が別に存在し、通常その会社が複数の比較サイトを開設、そこを通じて全国各地から塗装工事を希望するお客様の見積書を集めます。
情報を基に別会社から各地域の契約業者やその地域に契約業者がいない場合には電話帳などを参考に地元の塗装業者にFAXやメールで『こういった工事があるので見積りしませんか?』という情報を提供し業者を募集します。そしてそれに応じた業者が見積りをします。場合によっては元の工事金額より安い金額の提示を条件に見積りを行わされ、契約成立した場合にはその業者から工事金額の何%という紹介手数料を貰うというシステムで比較サイトも母体となる会社も運営されています。
勿論システム自体は工事斡旋業として何ら問題ではありません。問題なのは紹介する業者に対し比較サイト側がどういった会社か把握していないことと、契約はあくまでもお客様と業者間で行われトラブルがあっても一切責任を負わず、問題解決はあくまでもお客様自身と業者間で行わないといけないとうことなのです。
何故ならば契約業者といっても適正審査を行うでもなく、単に会社の連絡先などを登録した契約業者でしかないため比較サイト側も当然どのような会社か知る由もなく、したがって何かトラブルがあったとしてもお客様個人と業者間の契約なので関係ないという対応しかできないのが現実なのです。
何度も申し上げますが塗装工事は工事そのものが商品ですので、施工業者の知識や経験が未熟な場合、塗膜のフクレやハガレ・変色など思わぬトラブルに巻き込まれる可能性も十分にあり、事実そういった声がインターネット上にもクチコミとして多数拡散されています。
外壁塗装見積り比較サイトに潜む問題点は、
という2点だと思います。
もちろん少しでも情報が欲しいと思われる方には有益なツールであるかもしれませんが、同時にこのような危険性も含んでいることも十分ご理解ください。